一燈照隅 萬燈照國
第26回参議院通常選挙期間中の令和4年6月29日、大分全県区の候補の応援のため来県された安倍晋三元総理に初めて会うことができました。(以下、「総理」)
街宣車から演説されるお姿でもいいから見たいと大分市の演説会場に向かいました。幸運な事に演説前の総理に偶然会うことができたのでした。今から街宣車に上がり演説されるタイミングでご迷惑ではかとも思ったものの、写真撮影をお願いしました。「良いですよ。そちらの壁の前で撮りましょう。」と撮影に応じてくださいました。たくさん一緒に写真を撮って下さいました。撮影後に私の名刺を総理にお渡ししたところ、背広の胸ポケットから「衆議院議員 安倍晋三」のご名刺をくださいました。私の名刺を見ながら、
「学問のすゝめのところだね?」「いえ、総理、福翁は中津市で私は隣の宇佐市です。総理の奥様がこられた宇佐神宮があるところです。全国区では自見はなこ先生を応援してます。」「医療従事者?」と話かけても下さいました。
お伝えしたい事が沢山あったのですが、極度の緊張と高揚感でできませんでした。
遊説中の忙しい中、一有権者に対する優しいお振る舞いは巷間伝えられる安倍晋三総理像そのものでした。
この日から私の参議院選挙運動にいつも以上に力が入ったのは当然の事でしたが、7月8日がやって来てしまいました。
お亡くなりになって、総理の事がこんなに好きだったのかと改めて気づきました。
悲しみ、喪失感、不安、焦燥感でいっぱいになりました。
憲政史上最長の在任期間、アベノミクス、地球儀を俯瞰する外交、自由で開かれたインド太平洋戦略に代表される治績、第一次政権での不本意な形での退任後の雌伏、そして奇跡の復活は人々に勇気を与えました。
第二次政権でも戦後レジームという強固で高い壁との闘いは時に匍匐前進をしながらの死闘だったのでしょう。
戦後レジームを構成する政界、官界、財界の古い体質は勿論、戦後の根本的問題、課題に無関心な人々の多さも総理は憂慮されたのではないでしょうか。
道徳の教科書で学んだ「消えたワイン」という話を思い出します。
外国のある村の学校に長年勤めた教師が引退されるので村人は感謝の気持として皮袋に詰めたワインを持ち寄り一つの樽の中に入れ先生に贈った。
贈られた樽の中身はワインではなく水になっていた。
何故、ワインで満たされているはずの樽の中身が水に変わったのか?
自分だけが水を入れても誰も気づかないと、皆が思ってしまったという話です。
「一燈照隅 萬燈照國」
これは天台宗の開祖である伝教大師 最澄のお言葉だそうです。
まずは自分のいる場所を照らす。(自分の責任を果たす。)
責任を果たす人が多くなれば国全体も良くなるという事だそうです。
令和4年7月8日から生じた色々な感情をうまく消化できていないのですが、
「誰も安倍総理のような事はできない。しかし諦めてはいけない。
この国を守るために自分なりに闘うんだ。」
「正しい歴史を学ぶ事は、正しい未来を創造するためである。」
「選挙に行こう。一票を投じれば自分の意識が変わる、
意識の変わる人が増えれば国は良くなる。」
と自分を奮い立たせてます。
安倍晋三総理、命をかけて我々をお護り下さりありがとうございました。
偉大な政治家は、私の心の中で生き続けます。
願わくば国家鎮護の神となり、天上から我々をお導き下さい。
合掌。
大分県医師会会報 令和5年5月号 掲載分を一部加筆訂正。